Complete text -- "全障研埼玉支部の機関紙に巻頭言として寄稿した文章です"

08 December

全障研埼玉支部の機関紙に巻頭言として寄稿した文章です

全国障害者問題研究会埼玉支部の機関紙「SSCさいたま」に次の文章を寄稿しました。
生活保護批判などの動きを見ると、前回の総選挙で批判を受けて退陣したはずの「新自由主義」が復活しそうな予感がして、書きました。

 新自由主義は自然の法則に反している

今年度、私は高校の地学を担当しています。2学期は地球の歴史と生物の進化を学びました。生物の大きな進化のきっかけは地球規模の環境変動であり、生物は何度も絶滅の危機を乗り越えて進化してきました。
 約6億年前、地球全体が1億年にわたって凍りつきました。これは「全地球凍結」とよばれ、多くの生物種を絶滅させましたが、一方で単細胞生物から多細胞生物の進化のきっかけにもなりました。
約2億5千年前、マントルからの大規模な噴火が引き金となって起こった環境変化は当時の生物種の9割以上を絶滅させました。反面、その後「中生代」の低い酸素濃度の環境に適応する呼吸システムを備えた哺乳類と恐竜が爬虫類から進化する契機ともなったのです。
中生代は「恐竜の時代」といわれるように、ジュラ紀から白亜紀にかけて恐竜が繁栄し、多様に進化しました。その中から鳥類もあらわれました。しかし、その中生代も10キロメートル程度の隕石の衝突によって引き起こされた環境変動によって終焉を迎えることになります。恐竜をはじめ中生代の生物の95%の種が絶滅しました。「母なる地球」と言われますが、地球は「荒ぶる母」であったようです。
 さて、これほど大規模な環境変化ではなくても環境の変化はたびたび起きます。そのときに新しい環境に適応した生物が繁栄し、適応できない種が滅びるというのが生物の進化です。あらかじめ環境がどのように変わるのかは予想できないので、いろいろな環境に適応できるように多様なバリエーションを用意しておくのが生き残りの戦略です。
 恐竜が絶滅し、新生代になってもすぐに哺乳類が繁栄したわけではありません。アジアを除く各大陸では巨大な鳥が栄えて、哺乳類の巨大化を抑えました。やがて海面が下がって陸続きになると巨大な鳥と捕食哺乳類が争うことになりました。このときに大きさでは劣っていた哺乳類が勝利したのは、動きが俊敏であったことに加え、群れを作ったことだと考えら得ています。群れや集団を形成することも生物の種としての生き残り戦略だといえます。
私たちヒトの場合も障害のある人を含めて多様な人が存在するということは生き残り戦略と考えることができるでしょう。環境変化への対応という視点から必然的なことです。その上に、高齢者や障害者など生産活動が困難だったり、生産性が低かったりする仲間も排除せずに、包み込む高度な社会をつくってきたことで、ヒトは種として今日の発展を築くことができたのです。これも生き残るためには必然だったのでしょう。
このように生物の歴史からも、新自由主義がいう「自己責任」や「弱肉強食」の社会が人間らしい社会ではないことが証明されます。年内に衆議院選挙が予定されていますが、人間らしい社会を目指す候補に投票したいと思います。
22:00:56 | aoringo | | TrackBacks
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